2021年09月10日

「真夏の夜の夢」

寮生の一人がバレエ・ダンサーをしていて、『白鳥の湖』の王子役と『レミゼラブル』の宿屋の主人役をやると言うので、寮に残っている寮生たちと見に行った。コロナ下ということで観客は家族や関係者だけだったが、その内容は実に素晴らしいものであった。バレエ・ダンサーの彼は、学業よりもバレエを優先するプロ志望の学生で、現在も出演料をちゃんともらっている。それだけあって、驚くほど踊りがうまく、素人目にもその優秀さが解った。

 何よりも私たちを驚かせたのは、『白鳥の湖』の王子役の時の彼と『レミゼラブル』の宿屋の主人役の時の彼との違いであった。王子の時の彼は、優美にして繊細、大胆にして華麗、まさしく王子であった。ところが宿屋の主人の時の彼は下品そのもの、宿屋の客に娼婦を紹介し、たんまりと金をせしめてにっこりとほくそ笑む。何という落差。これがあの王子を踊っていたのと同じ人物かと目を疑うほどであった。

 後日、彼に聞いてみた。「宿屋の主人役、すごくうまかったねえ。ひょっとするとあれが君の地なの?」すると彼は、否定せずに、「どうかなあ」と笑っていた。その笑顔を見ながら私は思った。「彼はもう夢の世界に生き、夢を売るプロなのだ。これは大物になる」と。


 2021年9月9日

寮長 小舘美彦

posted by 春風学寮 at 09:47| 日記