先日、寮生の一人が誕生日をむかえたので、ささやかなバースデイパーティを開いた。そのときに、他の寮生の一人が彼のためにイチゴケーキとチョコレートケーキを作った。このこと自体驚くべきことだが、本当に驚くべきことはこの後に起こった。予定では、夜の8時に出来上がるはずだったケーキが何時になっても出来上がらない。いったい何が起こったのか。一時間、二時間待っても出来上がらない。かと言って、サプライズだから二階のキッチンに手伝いに行くわけにもいかない。そもそも手伝いに行っても他の寮生にはケーキの作り方などわからない。だから、みんなはひたすら待った。卓球をしたり、欅坂のライブ配信を聞いたりしてひたすら待った。中にはホールで寝転ぶ者もいた。こうして実に3時間半後、夜の11時半にケーキは出来上がった。ケーキを作った彼は申し訳なさそうにケーキを持って、入ってきた。
その時のほかの寮生たちの反応はどうであったか。誰一人待たされたことに文句を言う者はいなかった。全員が何事もなかったかのように、彼を迎え、ろうそくの火を吹き消す儀が行われ、楽しそうにケーキを食べ始めた。そして作った寮生の努力を讃えた。いやはやなんとも格好がいい。心配していたのは寮長の私だけのようだ。なんとも面目ない。
