2020年05月25日

「コロナの新しい恵み」


 緊急事態宣言で寮内にとどまることを余儀なくされた寮生たちの一部は、今までにない行動を取り始めた。なんと過去の寮生たちが書いた日誌やら文集やらを読み始めたのだ。図書室には歴代の寮生たちが書いた日誌やら文集やらが山積になっているのだが、これまで現役の寮生たちがそれらを読むことはなかった。ところが今や、コロナウィルスのせいでやるにこと欠いた寮生たちがそれらを読み始めたのだ。


 今朝の集会では、寮生の一人がそれらの一部を紹介してくれた。その内容のなんと面白いことか。彼が紹介してくれたのは、大東亜戦争開始直前の寮生たちが書いた文集であった。そこには、国民の自由を弾圧し始めた政府に対する批判や物資の窮乏のお陰で部活動ができなくなった嘆きやらシャンソン歌手に関する讃美やら、実に豊富な内容が書かれてあった。そして彼が最後に指摘したのは、大東亜戦争の恐ろしさにピンと来ていないのんきな雰囲気であった。「こののんきさはコロナウィルスの恐ろしさにピンと来ていない僕たちと似ています。」と彼は感想を締めくくった。


 そこには、80年前の寮生たちと今の寮生たちとの時を越えた交流があった。私は一瞬頭がくらくらするような感動に襲われた。これが寮生活の素晴らしさなのだ。寮生活は、普通では味わえないような貴重な体験を与えてくれる。コロナウィルスのような災難の中でさえ、その素晴らしさは、いっそう輝きを放つ。            寮長 小舘美彦


posted by 春風学寮 at 09:57| 日記