寮生二人と裁判見学に行った。二つの裁判を見た。一つ目は放火事件に関する控訴審の判決であった。争点は、犯行当時の容疑者の精神状況で、弁護士は精神的に病んでいたことを理由に無罪を主張したが、裁判官は十分合理的な思考ができたという検察側の主張を認め、控訴は棄却された。二つ目は詐欺事件に関する審理であった。検察官は、容疑者グループが共犯者の女性を使って男性から1200万円を騙しとったと主張し、様々な証拠を提出した。弁護側はどう反論するのか期待しながら待っていると、容疑者も弁護人もあっさりと起訴事実を認めてしまった。
寮生たちは、テレビドラマで放映されている通りのことが法廷でなされているのを見て興奮していたようだが、他方では事件がテレビドラマよりもはるかに素早く事務的に処理されていくのを見て危うさも感じていた。あまりに多くの犯罪がなされ、処理すべき案件は山ほどある。二つ目の裁判の最後には、次回の法廷の日時が決められたのだが、検察官も弁護士も裁判官もなかなか日時が決められない。みんなが忙しすぎるのだ。このような状況で本当にきちんとした裁判ができるのだろうか。
コロナウィルスが流行し、何もかもが停滞しているが、これは「もう少しゆっくり生きなさい」という神様の警告なのかもしれない。